業績

学歴

・京都大学工学部石油化学科(福井謙一研究室)卒業(量子化学)

・京都大学工学部工業化学科(福井三郎研究室)研究生(生化学)

・米国ブランダイス大学大学院  M.A.(生化学)

・米国アイオワ州立大学大学院 Ph.D.(D.E. Metzler研究室)(生化学)

(独り言:日本には「生化学」という学科は存在しない.生化学を研究する教室は,理学部・医学部・薬学部・工学部などの学部の一つの学科に所属する研究室として存在しているのが一般的である.教育的側面ではよいが,研究に主眼を置くと,学部の壁が邪魔をして,本来の生化学の研究はしにくい.「生化学」とは,生命をつかさどる本質である化学反応を学問する分野である.遺伝学・分子生物学・免疫学・酵素学・分析化学・物理化学・生理学などを網羅するのが「生化学」と言えよう.対象をヒト・動物・植物・微生物などにも限定すべきではない)

(独り言 その2:学部は高度成長期の当時花形?であった石油産業界と密接に関係する学問を研究対象とした「石油化学」であった.昔は燃料化学であったが,名称変更し,新しい研究棟が完成した直後の入学であった.これまで,福井謙一博士と吉野彰博士の二人のノーベル賞受賞者を輩出している.他には毎年候補に挙がっている同期の北川進博士がおり,彼が受賞すると3人目となり,物理学科に肩を並べることになるか...)

(独り言 その3:学生時代は石油を原料としたプラスチック製造の最盛期であった.化学的に物質を重合させることで,繊維やプラスチックの原料となる高分子物質を作るという技術を学んできた.重合させた高分子物質を熱や圧力で加工することで,プラスチックを成型し,活用することができる.硬質や軟質のプラスチック製品を化学的に合成するわけである.しかし,現代では,石油からのプラスチック製品は分解しにくく,環境汚染となり,マイクロプラスチックとなった残渣を生物が食することで,健康を害させてしまい,地球規模での生態系への悪影響がでてしまっている.石油由来のプラスチックは現在,悪者になってしまっている.近年,乳酸を重合させたポリ乳酸を加工成型して作るプラスチックが登場した.これは,環境にやさしいといわれている.その理由は,土壌中の微生物がポリ乳酸由来のプラスチックを分解できるからである.このような環境にやさしい生分解性プラスチックが登場し,成型技術も向上したことで,硬質と軟質のプラスチックが提供されている.原料となる乳酸はヨーグルトの成分として知られているように,乳酸菌などの微生物によって製造される.微生物が食するものは,穀物である.食べ残しや賞味期限切れの食材などはすべて微生物の餌となり,乳酸製造に活用できることで,プラスチックだけでなく,多くの観点で環境への寄与が考えられる.将来は,森林資源から効率的に乳酸などの生分解性プラスチック原料を供給し,活用できる時代がくることであろう.)

研究・活動内容

@京都大学工学部石油化学教室

・H2イオンの電子状態(量子化学・理論化学)大型計算機センターに通う

(独り言:近年マイナスイオンという言葉が一般に飛び交っている.水素分子のマイナスイオンは私の大学の卒論テーマである.いわゆる安定性を調べるということだったと思う.このイオンは地球上には存在せず,当時,太陽のコロナ中にスペクトル観察されたものと記憶している.そのような状態でしか存在しない物質の安定性をHとHとの相互作用(エネルギー状態)を距離の関数で調べたものである.日本化学会誌に論文として発表していただいた.)

(独り言:受験勉強は苦手だったが,理論という分野にあこがれていた.友人が工学部に理論の研究室があるというので,受験して無事に合格.研究室配属の時には,人気講座は抽選かじゃいけんということであったが,皆は私の希望を聞くと,それならお前は福井研ということになって,配属が決定.福井先生は博士課程の学生しか直接指導しない,ということで,当時,アメリカ帰りの講師の先生のところで指導を受けることに.研究室には,実験系の助教授の先生と,福井理論を実践する助手の先生と,実験と理論の両方をされる講師の先生で構成されていた.そのほかに,名古屋大学の教授の先生がおられたように記憶する.最初にお前は大学院志望か?と問われ,ハイと答えたら,上記の卒論テーマをいただいた.実際には,一年先輩が指導してくれて,無事に卒論は完成.いつも二人で喫茶店とか中華料理店(当時開業した王将など)に通って,勉強したものである.でも,自分は理論の落ちこぼれと気づき,分野変更を望んだ.高校時代から勉強しなくても何となく頭に入る有機化学と部活で一緒だった医学部の同期生が勉強していた生化学に興味を持ち,生化学への転換を希望した.しかし,いきなりの生化学分野での院試を突破するのは難しいとのことを考えていたら,先生よりアメリカでは学部から大学院へは分野の変更は自由?だということを吹き込まれ,留学する気になってしまった.)

@京都大学工学部工業化学教室

・ビタミンB12アフィニティカラムの作成(生化学)

(独り言:教授に生化学への転換希望が伝わると,学部の教授会で顔を合わせる生化学を専門とされる福井三郎教授にこんな学生がいると声をかけていただいたようで,三郎先生のところで生化学の勉強をさせてもらいなさい,となった.早速に三郎先生のところに伺うと,若い助手の先生を紹介され,そこで実験のお手伝い的な?テーマをもらい,アメリカに旅経つまで(1974.7.9)お世話になった.アメリカ流に表現すると,ダブルメイジャー(二重専門?)というのであろうか)

(独り言:お世話になった助手の先生は,その後,私が留学したブランダイス大学にポストドクとして行かれた.また,何年かしてWoods Holeで再会するのだが,それは後ほど)

(独り言:三郎研には当時タイからの女性研究者がおられた.その方が帰国するので,その前にぜひ宝塚歌劇を見たいとの希望であった.実家でそのことを話していると,間もなく妹がチケットを持ち帰ってきた.聞くと,大学の同級生に話していると,その中に阪急電鉄の重役さんのお嬢さんがいて,手配してくれたそうな.妹も役に立つものだと思った最初の出来事.観劇には,タイの研究者と研究室の技官の女性と私の同期の学生と私も参加.かぶりつきの良い席であった.だれがチケット代を支払ったのかはすっかり忘れた.)

@ブランダイス大学 (Graduate Department of Biochemistry)

 

@アイオワ州立大学

・Serine-O-sulfateによる自殺基質反応機構の解明:グルタミン酸デカルボキシラーゼとアスパラギン酸アミノ基転移酵素(生化学,NMR,MS,分光光度計,CD,GC,HPLC)発売されたばかりのWaters HPLCと対面(Dexter French研究室)・データカード印字機能付きのCarry分光高度計と対面(David Metzler研究室)・JEOL FT-NMR, Bruker 300MHz NMRを操る.【世界中で注目されていた自殺基質の反応機構を解き明かした】

(いまだに引用してもらっています:JBC(2022)101970)

・ビタミンB6酵素のスペクトル解析(UV・VISとCD)及びLog Normal Curve Fitting

・Pyridoxal-Sulfateを取り込んだApo-Aspartate aminotransferaseの失活機構の解明(生化学,NMR)

@ロックフェラー大学(Stanford Moore・James M. Manning研究室)

・D-アミノ酸アミノ基転移酵素のシアノアラニンによる自殺基質反応機構の解析(副作用のない抗生物質の開発研究)(Tom Soper博士と)

・鎌形赤血球貧血症治療薬の開発(Methyl Acetyl PhosphateによるAnti-sickling効果の検証)【化学治療薬に新たに加わる】(Ron Kluger博士と)

・赤血球・ヘモグロビンの酸素親和性の測定(Hem-O-Scan):低酸素親和性ヘモグロビンの開発への道をつける→人工血液の開発へ(AIDSや戦争での緊急輸血に冷蔵保存を必要としない代換血液として有効)

・翻訳語修飾反応の解析(メイラード反応の初期反応に必須な要因を同定:アンチエイジング)(唄 博士・森 博士と)

(糖尿病の原因となる初期反応である.乱視の原因や,体が硬くなったり,臓器不全を引き起こす反応で,老化を説明するものである.我々が見出したアマドリ転移反応に進む要因を取り除けば,糖尿病の多臓器不全などの症状を和らげることができ,長寿も望めるかもしれない)

・タンパク質内陰イオン結合部位の決定手法の開発(ヘモグロビンのアロステリック機構への新解釈)(New York Heart Association研究助成金をいただいた)

・D-アミノ酸アミノ基転移酵素の構造解析・部位特異的変異導入による酵素活性機構の解析(吉村 博士・二木 博士と)

・アミノ酸分析(世界で最初に開発された自動アミノ酸分析装置のメンテナンス・Beckmanアミノ酸分析装置のデジタル化)

@Woods Hole臨海生物研究所(MBL)

・ゴシポールの作用機構の解明(男性の不妊薬の開発)(ロックフェラー財団研究助成金をいただいた)

・ゴシポールの抗ウイルス,抗寄生虫活性の発見

・ゴシポールは白アリ駆除にも効果的

(つぶやき:毎年5月~9月まで10年間Woods Holeで過ごした.研究室はLilly Hall 1階であり,下村 修先生も同じ1階で,3階にはShinya Inoue先生がおられた.下村先生のところには,ほぼ毎日雑談がてらお邪魔していた.いつもご夫婦で実験されており,若輩者の私にも相手していただき感謝.1984年から10年間,毎年研究の進捗状況を伺っていたが,なんと,下村先生が発見されたGFPをクローニングしようとは思いつかずにいた.クローニングの技術はロックフェラーの研究室で行っていたのに!それが,私よりも10年遅れてきた研究者がGFPをクローニングして,発現系にのっけてしまい,ノーベル賞を共同受賞してしまったのには,たまげた.人様の研究は聞くだけではなくて,きちんとその研究の重要性を理解するところまでいかないといけないことを悟った.すでに遅し...正直,ビデオマイクロスコピーの技術を開発されたShinya Inoue先生と下村先生の共同受賞があるとにらんでいたのだが.)

@大阪医科大学(医化学教室:鏡山 博行教授)

・圧縮率がアミノ酸残基置換が及ぼす酵素活性変化を説明できることを示す(月向 博士と).

(独り言:月向博士はBrandeis大学のTimasheff教授の研究室に留学され,タンパク質の物理定数の測定技術を習得された方で,その後,音波測定とタンパク質の密度測定より,タンパク質の硬さ・柔らかさの指標に圧縮率が使えることを示してこられた.入手できるタンパク質の圧縮率測定をされていた.ちょうど,単一のタンパク質のなかのたった一か所にアミノ酸変異を導入したら活性には大きな変化が見られたが,立体構造上では活性の変化を説明できるような変化がみられないという問題があった.そこで圧縮率を測定した結果,活性との間での相関関係を明らかにできた.その後,月向博士は,部位特異的変異導入したタンパク質の圧縮率の測定を展開され,成功.)

・グルタミン酸デカルボキシラーゼの酵母での発現系の構築(田中渥夫研究室と)

・ヒスチジンデカルボキシラーゼの酵母での発現系の構築(田中渥夫研究室と)

・ゴシポールの研究(Woods Holeで継続)(科研費をいただいた)

@京都大学(天然高分子化学教室:林 力丸教授)

・カルボキシペプチダーゼY(CPY)の圧力変性(超高圧バイオサイエンス)【圧力と熱によるタンパク質の変性過程の違いを明らかにした)(科研費をいただいた)

・ウシ膵臓由来のリボヌクレアーゼ(RNase A)の大腸菌による発現系の構築・アミノ酸残基置換による酵素活性機構の解析

・カルボキシペプチダーゼYにアミノ酸残基置換を導入し,基質特異性・酵素活性・構造安定性の研究

・カルボキシペプチダーゼYの細胞内輸送と液胞での活性化機構の研究

・プロカルボキシペプチダーゼYの構造予測

・II型糖尿病の自己免疫疾患の診断薬としてGAD65をつかう研究(科研費をいただいた)

@奈良女子大学(応用微生物学教室:植野 洋志教授)

・香辛料が酵素活性を制御する:GABA合成酵素とヒスタミン合成酵素をモデルとして(皮膚の若返り効果,毛根を刺激して発毛促進効果)

・緑色蛍光タンパク質(GFP)をGABA合成酵素に連結させたGFP-GAD67を発現する遺伝子改変マウスを用いて生体内でのGAD67の発現を研究:味蕾・胃・腸での発現様式を発見(RT-PCR,蛍光顕微鏡,遺伝子改変マウス,共焦点レーザー顕微鏡)(小幡博士・柳川博士・渡辺博士と)

・細胞内でGADと共同作業するタンパク質群の探索研究(Biacore)

・GADアイソフォームの機能発現の違いの研究

・酵母がもつGABA合成酵素の多様性とGABAの分泌性の研究

@龍谷大学(生化学・応用微生物学教室:植野 洋志教授)