商品化・特許につながった研究成果:
発芽アーモンド
東洋ナッツ食品株式会社との共同研究

発芽玄米と同様に,アーモンドを発芽状態にするとGABAの含有量が40倍ほど増えることが判明.GABAには血圧上昇抑制効果があり,特保に指定されている.
忌避剤
オオカミを天敵とする生物に効果.オオカミの尿中の忌避成分を同定し,カクテル化に成功.
動物の天敵関係は遺伝子に埋め込まれており,いわゆる,忌避効果の慣れがない.たぶん,動物に恐怖心を与えるのであろう.
忌避効果は,野生のシカを対象として,定量的な試験を行っているので,他の研究では得られないほどの確実な結果を得ている.(詳細な手法は公開できず)
どのような生物に効果がある? シカ,イノシシ,サル,ハクビシン,タヌキ,アライグマ,キツネ,イタチ,野良猫,カラス,ハトなど(ただし,個体差はある)
【追記】よく誤解されるので記載しておきたい.天敵関係を利用する忌避剤の効果は100%ではない.動物同士においては,敵から逃げ切る,いわゆる賢い個体と,食われてしまう個体は存在する.狩猟仲間では,賢いシカは狩猟されずに生き残ると言われている.食害をする個体の中には「キープアウト」に敏感に応答してこなくなるものと,気にしなくていつもどおりの行動をとる(つまりは食害する)ものがいる.これらは遺伝子的には個体差(SNIPSに関係すると考える)があり,オオカミに対する恐怖心の有無があるということ.100匹のシカが食害している場所で,「キープアウト」を設置すると,ほとんどは来なくなるが,数匹が食害を及ぼすことがある.食害を受ける側としては,「キープアウト」を設置しても,やられた,ということで効果がないと決めつけることがあるが,たった1匹でも「キープアウト」への感受性が欠落している個体が食害を及ぼしているかもしれず,ほとんどの個体は来ていない,と考えてよい.そのようなときには,「キープアウト」の設置密度をあげることを勧める.
https://www.phytoaroma.jp/shop
・忌避物質 特許5893972
・忌避剤 特許第7098150号(2022.7.1)(特許証)
・忌避剤 特願2021-178708
【商品化】(株)ファイトクロームに商品化と発売をお願いしている
【写真・動画】


香辛料による減塩食の開発
塩味を感じる味蕾(III型)にGABAを合成するグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD67)の存在を明らかにした.GAD67活性を刺激する香辛料成分は塩味増強効果があることで,それらの香辛料の存在で,少量の塩の存在でも塩味を十分に感じることができる.つまり味の対比効果が使えるので,減塩してもうま味は損なわれないことになる.
・塩味増強剤及び塩味増強方法 特許4845067
美容効果
・グルタミン酸デカルボキシラーゼ活性化剤 特許4100911(2008.6.11)
・育毛剤有効成分のスクリーニング方法とその利用 特許4109099(2008.4.11)
GABAは成長因子を発現させる効果がある.特に皮膚細胞においては,成長因子は細胞の入れ替わりを促進するので,美白効果がある.GABAの発現を担うグルタミン酸デカルボキシラーゼの活性を促進することで,より多くの成長因子の発現を期待できる.そのように酵素活性を促進させる物質を香辛料成分に見出した.これら香辛料成分は,グルタミン酸デカルボキシラーゼを介して皮膚細胞の代謝に影響を与えるのである.
(独り言:2000年に奈良女子大に赴任したおり,4回生4名,M1が2名で研究室をスタートした.4回生の一人が香辛料に興味を持っており(就職はカレーの壱番屋に決めていた),GABA合成酵素に香辛料をふりかけたらどうなるか,という研究を行った.データがでたので,年明けの農芸化学会関西支部の研究発表会で発表した.数日後,電話があり,どうも会場で一日中講演を聴いていた方で,「昨日の講演で先生のところの発表が一番面白かった.お話を伺いたい」という旨であった.もともとは,GABA合成酵素の活性制御物質は薬の開発につながるかも,という期待から天然物である香辛料に目をつけて始めた研究であったので,その後,いろんな特許につながることができてよかった)