応用微生物学研究室は,GABAの研究をしています.

GABAはアミノ酸の一種です.グルタミン酸が脱炭酸されることで作られます(図1)

 GABAは,高等動物の神経系では主要な抑制性神経伝達物質として働くとても重要な物質です.その作用は,GABAに特異的な受容体(GABAA,GABAB,GABAC)に結合することでおきるとされます.GABA自身は,顆粒に溜められて,信号があれば,一気に放出されるとされています.でも,これは神経系での話で,非神経系での役割は解っていません.

   GABAの働きは多岐にわたります.血圧上昇抑制効果,利尿作用,成長ホルモン誘発作用などが報告されてます.また,GABAがないと癲癇のような発作を起こします.GABAが多すぎるとうつ病状態になります.当研究室では,GABAの働きを制御することに関心があります.

 どのような形でGABAの働きを制御できるのでしょうか?
  a. GABAの合成系の制御
  b. GABAの放出の制御
  c. GABAの受容体への結合の制御
  d. GABAが受容体へ結合してからの信号の伝達経路を制御
など,いろいろとあるでしょう.それぞれ一長一短があります.また,薬理効果を出すためには,一つだけの選択技ではいけません.現在の主流は,c のようですが,徐々にbにも注意がいっています.

当研究室では,究極的なチョイスであるa に焦点をあてています.a の研究は結構困難です.まず,酵素を扱うことで,受容体のように細胞に発現するだけでその作用を垣間見ることはできません.酵素の精製が必要になります.

 そこで,基本的には,精製の簡便さを目指し,微生物による発現系を構築し,微生物の培養から精製,そして,生化学的研究という流れで仕事を進めます.

 結局,遺伝子(分子生物学)からタンパク質(生化学・構造生物学)の領域を研究することになります.

GABA合成酵素の発現と精製

GABA合成酵素の発現と精製
生物種 発現GADの携帯 発現GADの宿主
動物 GAD65 パン公募
  GST-GAD67 大腸菌

His6-GAD67  パン酵母
パン酵母 His6-GAD1   大腸菌
麹菌 His6-GAD6   麹菌




動物由来のグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)の大腸菌における発現系をもっています.

GAD65とGAD67のアイソフォームの役割の解明

GADに作用するスパイス(香辛料)・生薬・ハーブの働きを研究してます.
(うつ病などの治療薬・味覚改変物質となり得ます)

微生物由来のGADの組換え体タンパク質の発現系をもっています.
(健康食品の有効成分としてのGABAの供給源となり得ます)

酵母由来のGAD1の構造と機能の解析

麹菌由来のGADの構造と機能の解析
乳酸菌由来のGADは,乳酸菌の酸耐性機構に関与しています.
パン酵母由来のGAD1は,パン酵母の酸耐性機構に関与しています.
 
   
消化器系組織(胃・腸・口腔(皮膚)・舌)におけるGADの機能解析
(味覚のシグナル伝達,味覚改変物質の探索,減塩食品の開発)

当研究室において,消化器系組織にGADの存在を明らかにした.特に,舌の味蕾細胞にてGADが発現しており,その味覚の情報伝達機構への関与を明らかにしようとしている.

GABA以外の研究もしています.

2.ヒスタミン合成酵素の構造と機能の解析

(キーワード:HDC,ヒスタミン,アレルギー,喘息,胃酸分泌,食中毒,美白効果,育毛作用,翻訳後修飾,活性化)

・ヒト由来のヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)の大腸菌における発現系をもっています.

HDCの活性制御因子をスパイス・生薬・ハーブより探索しています. (抗アレルギー剤・抗胃潰瘍剤・抗喘息剤の開発)

HDCの活性発現機構の研究

HDCはC末端約150残基が切断されることで活性化される.その活性化に関する機構はまだ完全には理解されておらず,生体内での活性発現を制御する点で研究を進めている.

3.プロテアーゼ・消化酵素についての研究


カルボキシペプチダーゼYの構造と機能の研究

梅酒製造後の漬け梅の有効利用についての研究

キノコの産生する消化酵素の研究

マツタケの人工栽培の研究

オオカミの尿中の成分を利用した本能に訴える忌避剤の研究

特許となった研究成果

特開2020-033308 「忌避剤」 (2020.3.5)

特許第5893972号 「忌避物質」(2016.3.4)

特許第4845067号 「塩味増強方法および塩味増強剤」(2011.10.21)

特許第4109099号 「育毛剤有効成分のスクリーニング方法とその利用」 (2008.4.11)

特許第4100911号 「化粧料組成物及び美容・健康食品組成物」 (2008.3.28)